武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書) に関しての書き込みより
目次、「算術からくずれた身分制度」に注目
数理会計の能力は才能であるため、世襲制ではうまく機能しなかった。
そのため、数学的能力を必要とされる分野から、世襲制は崩れていったのだ。幕末になると、有能な農民、町人の子弟を武士の養子に迎えることが盛んになっていく。
これはヨーロッパでも同じで、軍の将校には貴族出身者でないとなれなかった。しかし砲兵、工兵は、 弾道計算、測量などの数学的能力が必要とされた。こういう分野では、平民出身者でも将校になれたのだ。
ナポレオンは一応貴族だったが、コルシカ島出身で差別されていた彼が、実力主義の砲兵将校を選んだのは 注目に値する。
幕末の動乱の中で、当主の息子は軍事会計のプロに成長していく。そして海軍の経理専門官に出世する。 家柄を鼻にかけた武士が没落していったのに比べて、あざやかな変身を遂げる。結局、藩を越えた技術を身につけた者だけが、新しい時代に適応できたという、現代人の我々にも学ぶところの大きい話だ。
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